△JR飯田線の秘境駅のなかで最も有名な小和田駅
近年「秘境駅めぐり」がブームになっています。
「秘境駅」の定義は明確ではありませんが、昔の集落が消滅したりして、人里離れており日常的な利用者が少ない駅ということになるでしょうか。
そこでは周囲に豊かな自然環境があるどうか、列車の本数が少なくて到達が容易ではないかなども、秘境駅の秘境度を評価する上でのポイントになるそうです。
牛島隆信氏の「秘境駅へ行こう」の「秘境駅ランキング」よると2015年現在、秘境駅全国第3位には「飯田線 小和田駅」がランクされています。
小和田駅はJR飯田線の豊橋駅から83.8km地点にある駅。そんな小和田駅に東京から行こうと思えばどのようにアクセスすればいいのだろうか?
と考えつつ、新幹線とJR飯田線普通列車で小和田駅に足を運んでみることにしました。
秘境駅 小和田駅があるJR飯田線の起点は、愛知県の東部に位置する豊橋市の豊橋駅です。
新幹線で東京から豊橋まで移動する場合、東海道新幹線の「こだま号」が豊橋駅に停車します。東京駅〜豊橋駅までの所要時間は約2時間30分。
△東京駅に停車する東海道新幹線
東海道新幹線「こだま号」は東京駅のホームを後にすると品川、新横浜とビルが並ぶ首都圏らしい風景を走り抜け、小田原を出て静岡県に入ります。
右車窓には富士山の雄姿が過ぎていきのんびりした茶畑が車窓に展開。浜名湖をわたって愛知県に入ると豊橋駅に到着です。在来線のJR飯田線に乗り換えです。
(新幹線こだま号 停車駅)※新大阪行の場合
東京駅、品川駅、新横浜駅、小田原駅、熱海駅、三島駅、新富士駅、静岡駅、掛川駅、浜松駅、☆豊橋駅、安城三河駅、名古屋駅、岐阜羽島駅、米原駅、京都駅、新大阪駅
(時刻表)東海道新幹線の時刻表はこちら
<豊橋〜小和田駅:JR飯田線普通列車>
JR飯田線は豊橋から長野県の辰野間約195.7kmを結ぶ路線です。その多くは険しい山のなかを通り、トンネルや鉄橋が多いのが特徴。
また、小和田駅をはじめ、田本駅、中井侍駅、為栗駅といった「秘境駅」が多く点在する路線としても知られています。
時刻表を調べてみると、目指す秘境駅 小和田駅までは豊橋駅からJR飯田線の普通列車で約2時間30分かかるとわかりました。
なお、JR飯田線には特急伊那路号も走っていますが、小和田駅には停車しないようです。
(時刻表)JR飯田線の時刻表はこちら
(JR飯田線:豊橋〜小和田 乗車記)
△豊橋駅のホームに停車する岡谷行普通列車
豊橋駅の飯田線ホームを出発した岡谷行の普通列車は、鉄橋で豊川を渡って豊橋市内の住宅地を縫っていきます。
豊川稲荷の最寄り駅、豊川駅を過ぎるとJR飯田線は単線になり前方から山並みが近づいてきます。
山に囲まれて広大な田園地帯が車窓に連なりはじめ、カーブを描きながらその緑を縫っていくJR飯田線の普通列車。
野田城駅をでると勾配があがっていき、重厚な三角屋根を構えた新城駅に停車。
茶臼山公園が近くにある茶臼山駅と過ぎると、織田・武田の古戦場となった長篠城跡をかすめて本長篠駅に到着します。
△岡谷行JR飯田線普通列車の座席
湯煙あがる温泉宿が立ち並び始めると宇連川の渓谷沿いに湧く湯谷温泉駅に停車。
湯谷温泉は(1300年の歴史がある温泉で風光明媚な鳳来峡に沿ってわき出ています。そのしっとりと肌にやさしい湯は万病に効き目があるといわれています。
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湯谷温泉駅を出ると右車窓には宇連川の清らかな流れ。「やな釣り」の文字や川遊びをしている人々の姿も見えます。
川が遠のくと列車は何度もトンネルに出入りしながら勾配をあがっていきます。入道雲が狭い空に少し見えエメラルド色の水をたたえる渓流を渡り、またトンネルへ。
△宇連川は川底の岩が板のようになっているのが特徴
駅の区間も長くなりすっかり秘境ムードが漂っています。小さな集落があらわれて池場駅。ほどなくして東栄駅に停車します。
瓦屋根の古い民家がゆっくりと過ぎていきます。
鮎と歌舞伎の里、浦川駅でどっと乗客がおりていきました。緑の中に吊り橋が見えたかと思うとまたトンネルに入ります。
左車窓に天竜川が悠々と流れるさまが見えてくると、川沿いに集落が増えていきJR飯田線の普通列車は中部天竜駅に停車。
△JR飯田線はトンネルが多く沿線は豊かな緑に彩られている
佐久間水力発電所を眺めながら天竜川をわたり集落を見渡してJR飯田線で2番目に長い峰トンネルへ。なかなか出口が見えてきません。
ようやく出るとまたトンネルへ。
断崖に家々がはりついているさまや左車窓に吊り橋が見えると、まちなみが視界に広がり水窪駅に到着。
△吊り橋の向こうに水窪の集落が広がる
水窪駅を出ると眼下のまちを見渡した後、全長5063mの大原トンネルに入ります。なかなか出口が見えてきません。ようやく出ると大嵐駅に停車。
大嵐駅からもまたすぐトンネルの連続です。鉄橋で渓流を渡りまたトンネル。その先に、ようやく目的地である秘境駅 小和田の木造駅舎とホームが見えてきて下車しました。
小和田駅は静岡県、長野県、愛知県の3県境のある駅。列車が行ってしまうと蝉時雨の音だけが残りました。
△秘境駅 小和田駅に到着したJR飯田線 岡谷行の普通列車
(秘境駅 小和田駅に訪れてみて)
秘境駅として知られる小和田駅がJR飯田線の前身である三信鉄道の駅として開業したのは昭和11年(1936年)のこと。
小和田駅の駅舎はその当時を思わせる木造平屋建て。懐かしい雰囲気にあふれています。
△木造のつくりが昔懐かしい秘境駅 小和田駅
駅の近くには住居跡と製茶工場跡があるのみで民家らしきものは見あたりませんでした。
かつては富山村という村が近くにあったそうですが、佐久間ダムの完成とともに村は水没。
現在は小和田駅から20分ほど歩いたところに民家が一軒、そこからさらに30分ほど歩いたところの塩沢地区に数軒の民家があるのみなのだとか。
△小和田駅の眼下には豊かな緑と佐久間ダムの湖面が広がる
飯田・岡谷方面の列車がやってくるのは約3時間後。
一体何をして時間をつぶそうかと考えつつ、豊かな自然のなかにいるこのひとときこそ都会では味わえない秘境駅の醍醐味だなと思い、のんびり列車を待つことにしました。