△JR東海の臨時列車「飯田線秘境駅号」の車両に使われる373系電車
人里離れたところに存在する駅は「秘境駅」と称されることがあります。
秘境駅は山のなかにぽつんとあることが多く、集落まで歩こうものなら、道ともいえないような山道を数10分歩かねば辿りつかないところも少なくありません。
そんな、都会では考えられないような存在である「秘境駅」は全国の山岳路線を中心に点在しています。
中部地方でいえば、秘境駅は、愛知県の豊橋と長野県の辰野を結ぶJR飯田線が秘境駅の宝庫だといわれています。
JR飯田線の沿線には、秘境駅だといわれている駅が6駅あります。ただ、ネックはJR飯田線は列車本数が少ないため、それらの秘境駅をまとめて廻るのが非常に困難であること。
時間帯によっては、秘境駅にひと駅足を運べば数時間ホームで待ちぼうけとなってしまうのです。それが秘境駅というものかもしれませんが、秘境駅巡りを目的に遠方からやってくる観光客は大変・・
そんなニーズから2012年に生まれたのが、春と秋の数日のみ運転される臨時急行列車「飯田線秘境駅号」です。
急行「飯田線秘境駅号」は5時間弱かけてJR飯田線沿線の全6か所の秘境駅に停車していきます。
つまり、臨時急行「飯田線秘境駅号」に乗車すれば、1日でJR飯田線内の秘境駅すべてを巡ることができるわけです。
(急行「飯田線秘境駅号」の車両と座席)
JR東海の臨時急行列車「飯田線秘境駅号」の車両には、JR飯田線を走る特急「伊那路号」と同じ373系車両が使われています。373系電車は特急形車両なのでゆったりとしていて豪華さが備わっています。
△急行飯田線秘境駅号に使用される373系電車の座席
車内には2×2のリクライニングシートが配されており、車端部はグループ向けの4人掛けボックスシートになっています。
各座席のモケットは紫色をベースに統一されていて、シートピッチはゆったりした感じ。窓は大きく、車窓に流れる山並みや天竜川をワイドに楽しむこともできます。
なお、373系電車は特急形でありながらデッキと客室と間にはドアがないのが特徴で、それは、特急以外の運行にも対応するためです。
(急行「飯田線秘境駅号」の予約方法)
JR東海の急行「飯田線秘境駅号」は3両編成で運行され、全車指定席です。
乗車するためには、「乗車券」に加え、「急行券」、「座席指定券」も必要となってきます。それらは全国のJRの主要駅やみどりの窓口で購入することができます。
なお、乗車日が土休日なら「青空フリーパス」を活用すれば、別途急行券、指定券の購入で料金はそれよりお得になります。
ただ臨時急行列車「飯田線秘境駅号」は本数も少ない上で、大人気の列車なので、一般的に座席はとりにくいとされています。
なお、旅行会社のJR東海ツアーズでは、急行「飯田線秘境駅号」を活用したツアーも発売しています。
ツアー内容は、新幹線こだまで豊橋駅まで移動し、天竜峡駅まで急行「飯田線秘境駅号」に乗車。天竜峡で観光をした後、復路は特急伊那路号と新幹線こだま号で帰路につくといったプランです。
ただ、こちらも人気ツアーゆえにすぐに定員になってしまうようです(※詳細はJR東海ツアーズのHP等をご参照ください)
(楽天トラベル)JR飯田駅周辺および近郊の人気宿を探す
(急行「飯田線秘境駅号」ダイヤの特徴)
春と秋の数日間のみ運転されるJR東海の急行列車「飯田線秘境駅号」は全長195.7kmのJR飯田線のうち、豊橋駅〜飯田駅間を一日一往復のダイヤが組まれています。
その特徴は、「6つの秘境駅に停車する」「各秘境駅では、10〜20分間停車する」の2点が挙げられます。特に後者は、秘境駅巡りをする観光客にとってうれしい配慮。
というのは、秘境駅到着から発車まで10〜20分ほどの時間があることで、駅舎の近くを歩いたり秘境駅に停車している列車を写真におさめたりすることができるわけですから。
(運転日)
毎年、春・秋の数日間運転されます
2015年秋は11月19日〜23日に運転
(時刻表|2015年秋版)※★は「秘境駅」/運転日注意
(下り)豊橋駅→飯田駅
豊橋駅(9:50発)、新城駅(10:20着 10:40発)、大嵐駅(11:59着 12:16発)、★小和田駅(12:21着 12:41発)、★中井侍駅(12:46着 12:56発)、★平岡駅(13:04着 13:50発)、★為栗駅(13:58着 14:13発)、
★田本駅(14:24着 14:39発)、★金野駅(14:51着 14:56発)、★千代駅(14:58着 15:03発)、天竜峡駅(15:07着 15:11発)、飯田駅15:28着
(上り)飯田駅→豊橋駅
飯田駅13:08発、天竜峡駅(13:24着 13:40発)、★千代駅(13:34着 13:40発)、★金野駅(13:42着 13:48発)、★田本駅(14:03着 14:18発)、★為栗駅(14:25着★中井侍駅(14:57着 15:07発)、★小和田駅(15:12着 15:32発)、大嵐駅(15:37着 15:47発)、豊橋駅17:54着
※停車駅や時刻表は変更になることがあります。JR東海のHP等をご参照ください
JR飯田線沿線の秘境駅は、ダム湖建設で駅周辺の集落が水没した駅や、天竜川に沿う複雑な地形から人家から離れたところに設けられた駅など、地理的、歴史的な偶然が重なって生まれました。
それだけに、それぞれの秘境駅は個性があります。以下、臨時急行「飯田線秘境駅号」が停車する秘境駅6駅の特徴をまとめてみました。
△JR飯田線の列車はは険しい山のなかを幾多のトンネルをくぐりながら走る
秘境駅@「小和田駅」(JR飯田線)
・・JR飯田線の秘境駅のなかでも最も有名な存在で、古い木造駅舎も現存しています。かつて駅の近くに集落もあったものの、1956年佐久間ダム建設で水没。
現在は、小和田駅周辺の人家といえば、20分以上歩いたところにある民家1軒のみです。
△木造駅舎が残るJR飯田線の秘境駅のひとつ「小和田駅」
秘境駅A「中井侍駅」(JR飯田線)
・・標高289m地点の切り立った山斜面にホームがある秘境駅。眼下には、のんびりした茶畑が広がっています。
秘境駅B「為栗(してぐり)駅」(JR飯田線)
・・天竜川の流れを眺望できる秘境駅。戦前には為栗駅の周辺に集落があったと伝えれますが、平岡ダムの完成により集落は水没しました。
秘境駅C「田本駅」(JR飯田線)
・・天竜川の渓谷沿いにある秘境駅。最寄りの集落までは、山道を15分近く登らねばなりません。
秘境駅D「金野駅」(JR飯田線)
・・JR飯田線の駅のなかでも最も利用客が少ないとされる秘境駅。最寄りの集落までは徒歩20分ほど坂道をのぼらねばなりません。
秘境駅E「千代駅」(JR飯田線)
・・天竜川の砂利採取のための貨物駅として活用されていた秘境駅。当時のトンネル跡が残っています。