▲九州南部を走る観光列車「特急いさぶろう・しんぺい」(左)と「特急かわせみ・やませみ」(右)
九州南部を走る人気観光列車のひとつに「特急いさぶろう・しんぺい」があります。「特急いさぶろう・しんぺい」は、熊本から吉松駅間を、JR鹿児島本線とJR肥薩線経由で結ぶJR九州(九州旅客鉄道)の特急列車(熊本〜人吉間が特急として人吉〜吉松間は普通として運行)。
清流球磨川に沿って走る区間あり「日本三大車窓」に数えられる「矢岳越え」がありと、九州南部随一の風光明媚な車窓風景も人気です。
JR九州の「特急いさぶろう・しんぺい」のデザインを担当したのは、「特急ゆふいんの森」や「九州新幹線つばめ」などのデザインで知られるドーンデザイン研究所(水戸岡鋭治氏代表)。もともとは通勤型車両として運行されていたキハ40系気動車を観光列車改造し、人気特急列車へと変貌させました。
九州南部を走る観光列車「特急いさぶろう・しんぺい」の外観はえんじ色で落ち着いた雰囲気。車両中央部には車窓風景をワイドに楽しめるよう展望窓が設けられています。
その車内は木材を多用した落ち着きのある空間に仕上げられています。
座席は上部が格子状になった4人掛けのボックス席で、重厚感を感じさせます。車両中央部はコモンスペースとなっていて、ベンチやカウンターテーブルなども設けられています。
▲九州南部の古き良き時代を感じさせる「特急いさぶろうしんぺい」の指定席
ちなみに、「特急いさぶろう・しんぺい」という変わった列車名は、国鉄肥薩線の開通に尽力した鉄道院総裁の後藤新平(ごとうしんぺい)と逓信大臣の山縣伊三郎(やまがたいさぶろう)に由来しています。
通常期は2両編成の運行し、2号車の7席を除いてすべて指定席です(SL人吉が運行される日は3両編成で走ります)。下り列車(熊本・人吉→吉松)が「いさぶろう号」上り列車(吉松→人吉・熊本)が「しんぺい号」という列車名で走ります。
九州南部を走る観光列車「特急いさぶろう・しんぺい」には客室乗務員が乗務しているのも特筆すべき特徴。客室乗務員は観光案内や車内販売、写真撮影手伝いなどに携わり、乗客がより良い列車旅を楽しめるよう力になってくれます。
(車窓や途中駅の見どころ1:熊本〜人吉):特急列車として運転する区間
JR九州の「特急いさぶろう・しんぺい」は全国の鉄道路線のなかでも有数の人気路線であるJR肥薩線を通ります。
熊本〜八代間はのどかな田園風景が広がるJR鹿児島本線を走り、八代から肥薩線へ。車窓風景は山岳地帯に一変し、球磨川が沿いはじめます。緑豊かな渓谷にエメラルドグリーンの球磨川が流れるさまは圧巻。春は球磨川の河岸には桜も咲き乱れます。
▲八代〜人吉間は球磨川の流れがつくりだす渓谷美が美しい
人吉駅は相良藩の城下町として発展した歴史のまち。醤油蔵や焼酎蔵など史跡も多く、市内に湧く人吉温泉には昔ながらの公衆浴場も多く点在しています。同区間(熊本〜人吉間)には、「特急かわせみ・やませみ」や「SL人吉」も活躍しています。
(車窓や途中駅の見どころ2:人吉〜吉松):普通列車として運転する区間
人吉〜吉松間は「いさぶろう・しんぺい」は普通列車として運行されます。ですからこの区間に限っては、青春18きっぷでも乗車できるということになります(※座席指定券は別途要)。
列車は山岳地帯に再び入り急こう配で知られる「矢岳越え」に挑みます。スイッチバックで前進と後退を繰り返しながら山間を走り、日本で唯一スイッチバックがループ線上にある駅「大畑駅(おこばえき)」に停車。
▲スイッチバック方式で急こう配を上り下りしながら進む
大畑駅(おこばえき)は大畑駅は待合室の壁に無数の名刺が貼られている木造駅。それはこの場所に名刺を貼ることによって出世すると言い伝えられているのだそうです。
▲数多くの名刺が貼られている大畑駅の待合室
大畑駅から30分ほど走ると、もうひとつの峠の駅「矢岳駅」に停車。矢岳駅はJR肥薩線最高地点の標高536.9mにあります。駅前にはSL展示館がありD51形蒸気機関車を見ることができます。
▲JR肥薩線最高地点に立つ矢岳駅
▲矢岳駅前のSL展示館にあるD51
矢岳駅から真幸駅にかけては徐々に勾配を降りていきます。その区間に、列車が乗客の写真タイムのために一時停車するポイントがあります。「日本三大車窓」に数えられる九州南部随一の絶景ポイント。えびの盆地の先が眼下に広がり、晴れた日には霧島連山や桜島なども見渡すことができます。
▲篠ノ井線(長野)、旧根室本線(北海道)と並ぶJR肥薩線の「日本三大車窓」
「日本三大車窓」の絶景ポイントを過ぎると、列車はトンネルをくぐりながら勾配を降りていき、真幸駅(まさきえき)に停車。真幸駅のホーム上には国鉄時代に設置された「幸せの鐘」があり、鐘を鳴らした人は幸せになれるという言い伝えがあります。
▲鳴らした人に幸福が訪れるという真幸駅(まさきえき)の「幸せの鐘」
真幸駅から10分ほど走ると、列車は終点の吉松駅に到着。吉松駅は鹿児島県姶良郡にある駅でJR肥薩線とJR鹿児島本線を経由して鹿児島中央へ向かう観光列車である特急列車「はやとの風」と連絡しています。
<JR九州の「特急いさぶろう・しんぺい」DATA>
(料金)九州南部を走る観光列車「特急いさぶろう・しんぺい」には、指定席と自由席が設けられています。ただ、自由席は2号車の7席のみ(※2両編成で運行する場合)であるため乗車には事前に指定席を予約しておくことをお勧めします。
熊本〜吉松間を指定席利用の場合の料金は
大人片道料金:3930円(乗車券2480円+指定席特急券1450円)
子供片道料金:1960円(乗車券1450円+指定席特急券720円)
(列車時刻表・停車駅)
※下り列車(熊本・人吉→吉松)が「いさぶろう号」、上り列車(吉松→人吉・熊本)が「しんぺい号」として運行
「いさぶろう1号」熊本駅8:31発、新八代駅8:58発、八代駅9:03発、人吉駅10:08発、
大畑駅(10:24着 10:27発)、矢岳駅(10:50着 10:55発)、真幸駅(11:08着 11:13発)、吉松駅11:22着
「いさぶろう3号」
人吉駅13:22発、大畑駅(13:39着 13:44発)、矢岳駅(14:10着 14:15発)、真幸駅(14:33着 14:38発)、吉松駅14:48着
「しんぺい2号」
吉松駅(14:49発)、真幸駅(12:02着 12:07発)、矢岳駅(12:27着 12:32発)、大畑駅(12:49着 12:54発)、人吉駅(13:05着)
「しんぺい4号」
吉松駅(15:16発)、真幸駅(15:29着 15:34発)、矢岳駅(15:53着 15:59発)、大畑駅(16:17着 16:23発)、人吉駅(16:35 16:43着)、(八代駅17:46着 17:47発)、新八代駅(17:51着 17:52発)、熊本駅18:18着
※上記は2017年7月時点での情報です。時刻表・停車駅等変更になることもあります。詳細はJR九州のHPをご確認ください