
ちなみに、私自身の考えとしては、歓迎できる点は一部あるものの、全体として否定的に考えています。その理由について今回は4項目に分けて述べたいと思います。
[歓迎できる点]
まず、今回の「青春18きっぷ」リニューアルについて「歓迎できる点」について述べます。そのひとつ目は、自動改札機での利用が可能になるということ。
これまでは「青春18きっぷ」を利用するとき、有人改札に並んで駅員さんに判子チェックをしてもらったり押印をしてもらったりする必要がありました。ときには長蛇の列に並んで、大きな時間のロスが発生することも・・。その問題については、これからの「青春18きっぷ」は自動改札機を利用できるようになることから改善されるということになります。そのことは利用者にとっても望ましいことですが、一方で、駅員さんにとっても負担も軽減される点もメリットだといえるでしょう。
2つ目としては、私も含め否定派が多いことから鑑みるに、今後は「青春18きっぷ」の利用者が減ることによる混雑緩和が見込まれること。たとえば、熱海駅、大垣駅など地域の分岐点となる乗換駅において、青春18きっぷ利用者であふれかえる状況が発生することもしばしばありました。それにより、そういった駅を普段から利用する方々が着席しにくくなるという状況も少なからず生まれていたと思います。それが、今回のリニューアルにより、「青春18きっぷ」の利用者自体が減少すると考えられることから、緩和されるものと思われます。
以上の2点が歓迎できる点です。確かにメリットではあるのですが、以下に示す「歓迎できない点」と天秤にかけると、非常に小さなことでしかないと私は考えています。
[否定する理由@・連続5日は使いにくい]
では、これからは本題ではありますが、リニューアルされる「青春18きっぷ」について私が否定的に考える理由を4項目に分けて述べます。まずは、「連続5日は使いにくい」ということです。
従来の「青春18きっぷ」は、有効期間内なら利用者が5日を自由に選択して、自由気ままな旅を楽しむことができました。例えば、1日目、東京から京都に移動して2日かけて京都観光を楽しみ、次は山陰本線で萩に向かい親戚宅で数日を過ごして・・といったような旅をできました。ところが、今後はそういった旅はできなくなってしまいます。なぜなら、利用の条件が「連続した5日」に変わるからです。
有効利用しようと思えば、5日連続で電車で移動をしなければならない。つまり、5日連続で時間がとれる人のみが有効利用できるということになります。その点、どれだけの人が対象者に該当するのか疑問です。会社勤めをしている社会人や大学のゼミや授業に忙しい学生は、それだけの連続した休みをとれるのかというと、現実的に難しいことでしょう。
自ずと、有効利用できるのは、休みの多い大学生や移動をしながらフリーランスの仕事をしている人くらいになってしまいます。これまで幅広い層に愛されてきたきっぷを、敢えて使いにくくして対象者を減らすことについて、JR各社がどのように考えているのか大きな疑問です。
なお、5日連続の休みのとれない人たちを救済する意味でもJR各社は3日用も設定したのだと思われますが、こちらは1万円と値段が5日間とあまり変わりません。1日あたりで計算すると3333円となり、5日用の2410円に比べてお得感が大幅に少なくなるというのもいただけません。また、土日のみ自由時間を確保できない層の救済にはなっていない点も、物足りなさが否めません。
[否定する理由A・滞在型の旅ができなくなる]
これまでの「青春18きっぷ」は利用者が旅をしながら、観光地や温泉地を中継点に設けて、ゆったり羽を伸ばせることも大きな魅力でした。中には、1ヶ月近く現地に滞在して、現地の文化や食をじっくり楽しむ層もいました。ところが、これからは5日間連続(または3日連続)鉄道に乗るようなハードな旅しかできなくなります。
中高年の方なら、5日連続で電車に乗っていたら疲れてしまうでしょうし、何よりの問題は滞在型の旅ができなくなる点。もちろん、移動を重ねる忙しい旅が好きな層もいるでしょうが、それは人によりけりです。人によっては同じ場所で数日〜数週間滞在してゆっくりとしたいという層もいるわけです。後者のような人々が「青春18きっぷ」を活用できなくなる状況をつくりだすことにより、地域の観光・宿泊業界の発展にも悪影響がでないものか危惧するところです。
「否定する理由B・自由気ままな旅ができなくなる」
従来の「青春18きっぷ」は、有効期間内なら自由に利用する5日を選択して、自由気ままな旅を楽しむことができました。自分探しの旅に出る人、都会の喧騒からしばらく離れたい人、未知の風景をじっくり探索したい人など、利用者によっていろいろな活用法がありました。そういった自由度の高さからも青春18きっぷは、幅広い層から愛され、結果的に、旅行文化の発展にも大きく寄与したものだと思われます。
それが、これからは、利用者は自由に利用日を選べなくなることから、旅の醍醐味である「自由」という要素が大きく失われてしまいます。5日連続で電車に乗る旅が、果たして利用者にとってよい旅の条件といえるのでしょうか?私は、「自由」という旅の魅力を利用者から奪い、旅行文化の衰退を招いてしまうことにもなりかねないと考えています。
[否定する理由C・仲間と気軽に旅をできない]
従来の青春18きっぷでは、仲間と一緒にお手軽な旅を楽しめる点でも重宝されてきました。お盆や正月期間に家族と一緒に利用して帰省をしていた人も多くいたことでしょう。
しかし、これからは複数人での利用ができなくなります。そのことから、家族や友人など仲間と一緒に旅がしにくくなります。5日用はもとより、3日用にしても、3日連続で休みをとれる人としか一緒に旅に行けなくなるというのは、条件として高いハードルだといえるでしょう。
<まとめ>